その二 武術の定義

 

実際の戦場で生き残る為の武の技術。徒手のみならず、武器の扱いも含まれます。場合によっては人の命をも殺める事になる為、徒手の技術で言えば目を突く、金的を蹴り上げる、指を逆に捕る、頭髪や耳を掴むなどの格技では禁止されている危険度の高い技術が多く含まれています。

因みに私の個人的意見ですが、現代日本には武術は無いと考えております。それはレベル的に云々と言う事ではなく、そもそも日本には戦場がないからです。日本国内における最後の内戦は1877年(明治10年)の西南戦争ですので、それ以降はどれだけ危険度の高い技術を開発したとしても、日本国内にいる限りその有効性を立証する事は不可能です(実践すれば、例え有効であると確認できたとしても殺人罪に問われますからね)。

但し、古の戦闘術を今に伝える存在としての古武術はあります。

古武術の場合、例えば剣術であれば開祖が術(殺人剣)の鍛錬の果てに、精神性の探求の為に禅の道へ進み、活人剣へと昇華する事が多いと思われます。

ですので、和結庵では、武術の技法と精神に触れる為に、一定のレベルに達した者で希望する者に、私がご縁を頂いている古流剣術の先生に「古義伝習」として講師にお迎えして、その一端だけでも感じて世界観を垣間見る事で、日本古来の叡智の一つである「武」への知見を深める場を提供する様にしております。

先程は「戦場格闘用」としての武術は日本に存在しないと、その私見を申し上げましたが、更にもう一つの視点として自己防衛即ち「護身術」と言う限定条件の中での武術の成立意義はあろうかと考えております。

 

和結庵では、古から脈々と伝承されてきた武術の精妙かつ合理的な術理を、現代日本の社会情勢などを鑑み、「先制防御」と言う概念に基づき体系化を試みております。